6「さわのはな」は今の時代に通用するか

(1)「さわのはな」の役割

 経済が安定し、飽食の時代を迎えて「量は力、品質は信頼」が強調される中にあって、コシヒカリはコメの代表品種として他の追随を許していない。それは「量と品質」が傑出しているからである。

 それに対して「さわのはな」は一般市場相手では「量」の面で、非力といわなけれぱならない。だが、個々の消費者(顧客)には、風味があって、甘い感じのする「さわのはな」の美味しさは、個性化の今の時代にこそ通用すると考えられる。競争はますます激しくなる今の時代、最終的には消費者の信頼と満足を商品「さわのはな」として、いかに得るかということではないでしょうか。

(2)新時代と「さわのはな」

 普通は栽培面積が増えると必ず欠陥がでて、品種の寿命を縮めるのに、「さわのはな」は命とりになるほどの欠陥は現れない長寿の品種である。

 とりわけ、1967年に始まったコメ増産運動の最中を除けぱ作付面積の急な落ちこみはなく、少肥で安定した収量をあげるようになった。そこで、それぞれの地域や天候の変化にマッチした「さわのはな」の理想的な生育に、細かい肥培管埋を駆使して、いっそうの収量・品質をアップさせる皆様の創意工夫を切に期侍したい。

 21世紀に向け人々の最大の関心は、食糧と環境間題といわれ、これから目指す品種は、化学肥科や農薬の使用が少ない、環境負荷のきわめて少ない条件での栽培にも耐える品種ということになろう.「さわのはな」は、こうした条件に適した遺伝子をもつ品種のように思われる。

(3)汗の結品「さわのはな」

 もともと品種改良は、一挙にいろいろな特性を改良できるものではなく、一歩一歩階段を登るように欠点を改めながら、よりよい品種を自指すものである。

 農林省では1927年から組織的な稲の品種改良を行うことにした。農林省農試を中心に北海道・東北・関東・北陸など全国8区分し、県農試を指定し、人工交配して雑種第2代で選抜した第3代目の材料をこれらの試験地に送り、それぞれ選抜と固定をはかることになっていた。

 「さわのはな」を生んだ「農林8号×abc」の材料は、いうまでもなく組織的な品種改良の結品である。「さわのはな」が誕生して30数年たつた今も、「美味しい米」と親しまれているのは、「朝日」から「農林8号」を、また、「亀の尾」から「陸羽132号」得て「abc」に伝えられた食味が集積したと考えられ、それは明治・大正・昭和の3代にわたって担われた方々の汗の結晶でもある。

☆ 目  次

   0  扉のページ

   1   はじめに

   2  「さわのはな」の誕生まで

   3  「さわのはな」の美味しさは時代の要請から生まれたのか

   4  「さわのはな」の魅力

   5  「さわのはな」の作付けはなぜ少なくなったか

   6  「さわのはな」は今の時代に通用するか (現在のページ)

   7   むすび



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